電力・ガス取引監視等委員会
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制度設計専門会合(第3回)‐議事要旨

日時

平成27年12月4日(金曜日)8時30分~11時30分

出席者

稲垣座長、林委員、圓尾委員、安藤委員、岩船委員、大橋委員、新川委員、辰巳委員、松村委員

オブザーバー等
児玉SBパワー株式会社取締役COO、秋山エネット経営企画部長(代理出席)、野田関西電力株式会社執行役員、瀧本中国電力株式会社執行役員、前田中部電力株式会社執行役員、金子消費者庁消費者調査課長、祓川日本風力発電協会副代表理事、藤井公正取引委員会調整課課長、小川資源エネルギー庁電力市場整備室長

主な意見

①前回の御指摘事項等について
②卸電力市場における不公正取引について
③電力の小売営業に関する指針(案)について
④適正な電力取引についての指針の主な改正事項について

  • 提出資料に基づいて電源構成開示の義務化を要望。具体的根拠は以下のとおり。
    ① アンケートによると、消費者の83%が電力会社の選択に際して電源構成は必要な情報であると回答しており、開示は圧倒的多数の消費者の要求であること。
    ② 消費者は、商品のライフサイクル全体を考慮して商品を選択するため、電気の発電方法に関する情報は極めて重要な情報であること。
    ③ 食品表示法は、「安全性の確保」とともに「自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保」もその目的としていること(「安全性の確保」のためだけに開示を行っているわけではない)。
    ④ 欧州やアメリカでは電源構成開示を義務化していること。
    ⑤ 電力調査統計のため、事業者は「一般電気事業者(発電実績)」「新電力(発受電実績)」を公表しており、義務化により事業者に新たなコストが発生しないこと。
    電源構成開示について、市場が適切に機能していない場合に改めて検討するとしているのはどのような趣旨か。
    電源構成の記載は、HP等に掲載とされているが請求書にも記載して欲しい。
  • 電力調査統計のため、事業者から電源構成の報告を受けているのは事実だが、常時バックアップなどの他社受電部分については電源構成が判明していない(第2回電力基本政策小委員会の資料においても他社受電分については記載されていない)。
  • 電源構成が分からない場合には「その他」と記載するよう整理されたと理解しており、それで問題ない。 
  • (資料3の14頁について)「一定期間契約の解約を一切許容しない」との記載があるが、そのような契約が存在するのか疑問。解約条項が無くとも民法の一般規定に基づいて解約自体は可能なはず。問題となるのは、契約期間が長い場合や解約金が高すぎる場合など実質的に解約が不当に制限される場合であり、ガイドラインにも不当に契約期間が長い場合について記載を加えるべき。ただし、契約期間が長いことのみをもって問題とするのではなく、数年目以降は違約金が無くなるなど消費者の利益に資する場合には問題ない。
    また、ガイドラインに具体的な期間を示さないことは理解。今後、長期契約が締結された場合には、ヒアリングを実施し、問題がある場合にはガイドラインを改定すべき。
    (資料3の20頁について)セット販売について、契約時期がずれる場合に説明すればそれで足りるとするのは不十分。セット販売の片方の契約期間を短縮するなど、契約期間を揃えるための合理的な方法が存在するにもかかわらず、契約期間に差をつけることで常に違約金が発生する契約を認めるべきではない。
    電源構成開示について、「望ましい行為」とするのであれば、ほぼ全ての事業者に開示をして欲しいと考えている。仮に大半の事業者が情報を出さない場合には、「望ましい行為」という位置付けが機能しなくなるため、改めて検討が必要。
    ガスと電気のセット販売について、ガス市場は2017年4月より自由化されるため、ガス料金については少なくとも来年1年間は料金が下がることはあり得ない。ガスとのセット販売により、ガス料金も安くなると誤解されるような表示は問題がある。また、電力とガスのセット販売時にのみ料金を割り引く行為は、独禁法上問題があり得る。その他、セット販売時に電力料金とガス料金の双方にポイントを付して割り引くことはガス事業法上問題となり得るものであり、このような問題が生じた場合には、委員会は担当課と連携して対応するべき。
    資料4の常時バックアップの契約窓口に係る整理は合理的。価格については、プライススクイーズが生じないように、小売部門が自社グループの発電部門から購入している価格と整合的であれば問題ない。
    発電所トラブル時に、一般電気事業者の電源が停止した場合には十分な電力が供出されるが、新電力の電源が停止した場合には電力が十分に供出されない等の事態が生じないように委員会でしっかり監視を行うべき。
    インサイダー取引については、あまり厳しくして、取引への萎縮効果が生じてしまっては意味が無いので、厳しくしすぎないように配慮すべき。
    • →電源構成開示について、市場が適切に機能しない場合に改めて検討するとしているが、委員会としては本ガイドラインに基づき事業者の情報開示が進むことを強く期待している。「望ましい行為」というガイドライン上の位置付けが、これまでのように規範として事業者に遵守いただけることを期待している。
      「不当に長い」の解釈については、資料3の14頁に具体的期間を記載していないが、総合的に様々な事情を勘案して判断することとなる。2年を超える長期契約は現状では考えにくいと思っているが、今後、市場動向を適切に監視していきたい。
      ガス事業規制はエネ庁が担当しており、正式な回答はエネ庁から行われると思うが、一般論として、仮に供給約款に基づくガス料金から、ポイント等の付与により実質的に値引きが行われていると判断された場合、供給約款以外の供給条件では家庭にガスを供給してはならないとするガス事業法の規定に違反する可能性があると考えている。
      また、御指摘のあった独禁法上の問題点については、公取委において個別の事案に応じて判断されるものと理解している。(新川課長)
    • →電源構成の開示方法については、事業者にガイドラインに基づいた対応を求めていく。ただし、事業者の判断でよりプラスの方向で工夫し、積極的な情報開示が行われることは歓迎したい。(松尾事務局長) 
  • (電源構成開示について)「望ましい行為」とするのであれば、需要家が電源構成に関する情報を利用して事業者を選択しているか、事後的に確認を行うべき。統計的には、アンケート調査と消費者の実際の行動との間にかなりの乖離があることが証明されており、経済学では実際の消費者の行動をフォローして検証することが一般的。
    資料3の14~15頁の不当な解約制限について。通信でよくあるのが、「毎月4千円、長期間使う場合には2千円のキャッシュバック」というように長期間契約する場合にはボーナスを付与する形態が存在する。このような場合にも「事実上消費者の解約が制限している」場合に該当するのか。
    資料3の15頁の転居に伴う違約金について、①異動等により突発的に転居する場合と②当初から一定期間後に転居が予定されている場合の2種類が存在するが、②の場合に、2年間契約として割引を受けていながら、違約金無しで解約を求めることも認められるのか。
    資料4の5頁について、「10万キロワット以上の発電ユニットに係る事実等」とあるが、この「等」の中身について教えて欲しい。 
    • →資料4の5頁の「等」については、適切な取引ガイドライン改正案に記載しており、停止の情報や復旧の見通しの状況といったことである。(田邊室長)
    • →今後、需要家の電源構成情報の利用状況についてはアンケート調査等を行っていきたい。また、二酸化炭素の排出量についてもクリック件数を確認するなど、フォローアップの仕方について今後検討していきたい。
      キャッシュバック型が解約制限に該当するかについては、契約期間とキャッシュバック金額のバランスで決まるため、個別の事案ごとに判断する他ないと考えている。
      転居については、突然赴任を命じられる場合が大半であるため、違約金を負担することなく解約できることを望ましい行為としている。(新川課長)  
  • (資料4の11頁について)常時バックアップの契約窓口を小売部門に置く場合、新電力の契約状況といった情報が競争相手である旧一般電気事業者の小売部門に共有されてしまうことが懸念される。契約情報の遮断などの検討も行ってほしい。
    (資料4の21頁について)計画外停電の場合に、発電ユニット名を公表することとなっているが、新電力のように少数の発電所しか保有しない場合には、停止情報を公開することにより価格を不当につり上げられるのではないかということを懸念している。委員会には事後的にしっかりと相場操縦の有無を確認してもらいたい。
  • 資料4の11頁の常時バックアップについては先程の御意見と同じ懸念を持っており、同意見。
    (資料5の7頁について)ビジネスモデルの整理として、「順次取次ぎ」は問題となる行為とされているが、代理店がさらに取次ぎを行うのはこれに該当するのか確認したい。 
    (資料5の11頁について)原因不明な停電へ対応として、一般電気事業者からブレーカーの操作等に関するマニュアルを示して欲しい。また、一般電気事業者からのタイムリーな情報提供をお願いしたい。
  • ガイドラインは事業者の行動規範であり、事業活動の準備のためにも1日も早く整備していただきたい。
    電源構成開示については、表示の仕方については過度なものとならないように配慮いただいているので、これまでの議論を踏まえてしっかりと対応していきたい。
    長期契約については、契約拘束度の強さが問題であり、結局は、契約期間と違約金のバランスの問題となる。事務局から説明いただいた方向で対応して欲しい。 
    • →ガイドラインは事業者として対応すべき最低ラインを示したものにすぎず、事業者が企業理念等を踏まえて創意工夫を行うことにより、よりよいものを提示して欲しい。一般電気事業者として、ガイドラインがなければ対応できないというのはおかしい。妥協なき議論を行っていきたい。(稲垣座長)
  • (資料3について)電源構成開示として二酸化炭素排出係数が記載されているが、これは温対法上定められている内容と整合的なものか。
    契約期間については、通信を参考に議論がされているが、サービス内容とセットで考えないと契約期間と金額だけでは判断が難しい。個別事例ごとに、どのような理由でどの程度の契約期間になっているのかについて確認が必要。
    資料4では、計画外停止の際には、発電ユニット名を公表することとなっているが、他社の発電ユニットが停止した際に、意図的に自社発電ユニットを停止させて、価格をつり上げることも考えられるので、そのような相場操縦行為も監視すべき。
    (資料6の5頁について)適正取引ガイドラインは支配的事業者の状況に変化が生じた場合に改正を行うとされているが、頻度を上げて、定期的に改正を行って欲しい。
    適正取引ガイドラインは競争政策に対するスタンスを国際的にも示す重要なガイドライン。今日の改正案では「一般電気事業者であった小売電気事業者」などと書かれており、英訳等も困難。今後、「支配的事業者」を主語とした上で、その定義を定める等の改正が必要。
  • (資料4の17頁について)インサイダー情報を偶然知った場合の事例が挙げられているが、金融取引では、インサイダー情報を偶然聞いた場合であっても、その内容を理解できる人であればインサイダー取引に該当し得るため、事業者にはしっかりと対応して欲しい。
  • 不当な解約制限ついて、結論的には契約期間と違約金の内容を総合的に判断するとの整理で問題ないが、どのような場合に不当に高額又は不当に長いとなるのか示して欲しい。
    資料4に示されているインサイダー取引の枠組みについて違和感はない。金商法と比べて「正当な理由」について柔軟な運用を行うこととしているが、電力取引と金融取引では性質が異なるため問題ない。
    金商法の場合、知る前契約・計画については、裁量が認められていないが、電力取引の場合にもそのような理解で問題ないか。 。 
    • →資料4の9頁では、第三者に利益を計上させる目的をもって、インサイダー情報を開示することを問題としているが、「自己の」利益を得る目的で開示する場合は、問題としなくてよいのか確認したい。(稲垣座長)
    • →取次ぎの場合には、需要家と小売電気事業者が直接契約しないため、間に複数の事業者が入ると需要家がどの事業者と契約しているか分かりにくくなるという問題があるが、代理と取次ぎが間に入る場合は「順次取次ぎ」には該当しない。本件について何か具体的に想定されているものがあれば個別に相談いただきたい。
      停電時の対応については、マニュアル作成も含めて、委員会からも一般送配電事業者と相談したい。
      二酸化炭素排出係数の記載については、温対法上の表示の内容と整合的なものと理解している。
      適正取引ガイドラインの見直しについては、支配的事業者の概念に影響する大規模な改正はもとより、自由化後の状況を踏まえて適時改正を行いたい。
      資料3の17頁の「不当性」について、現時点で具体的な内容を示すつもりはない。(新川課長)
    • →常時バックアップについては、同制度をどうするかという点も含めて、今後検討していきたい。また、発電ユニット停止情報の開示について、適正取引ガイドライン改正案では、意図的に発電所を停止する場合を開示対象としており、発電ユニットの停止に係る情報の公表後の相場操縦を含め、しっかり監視していきたい。
      知る前契約・計画については、基本的には裁量がないと考えている。
      (資料4の9頁について)自己の利益を得る目的で取引を行う場合には、同時に第三者に利益を与える目的が認められるのではないかと考えており、また、他人に利益はないが自己に利益がある場合が想定しにくかったため、現時点では「自己の」利益を得る目的の場合の開示については言及していない。(田邊室長)
  • 事後的に消費者が電源構成情報を利用して事業者を選択したか調査すべきとの意見もあったが、消費者による実質的な選択機会確保のためには、情報公開が大前提であることを忘れないで欲しい。

⑤託送供給約款等の事後評価について

  • 5%と設定して、様子を見るのが適正ではないか。ストック管理方式と乖離率の2つの事後評価について、両方厳しい基準だと効率化インセンティブが働かなくなる一方、送配電の特性を考えれば利益を貯めすぎて厚い自己資本を持つのも問題。ストック管理方式の方が重要で厳しく設定されていることも考えれば、乖離率は5%でよいのではないか。他律的要因については、気温の影響でぶれた場合は除外すべきだが、それ以外は難しいのではないか。
  • 託送料金は広く国民が負担するものであることを踏まえれば、5%は大きい印象。
  • 今の託送制度は暫定的な制度であり、今後数年間で抜本的に変わる可能性がある。制度が変わることによって託送料金を再算定せざるを得ない状況を踏まえれば、コスト削減努力の最中、料金改定を求めなくてもよいのではないか。制度が変わり、その実績をみて乖離率を再度見直せばよい。他律的要因はステップ3で考えればよい。
  • 効率化インセンティブをどう引き出すかが重要。ストック管理方式と乖離率による事後評価は、二重規制に見えるし、5%や10%だとしてもでも今この制度を導入することには、ためらいはある。
  • 根拠が無いので決めないというのは困る。暫定的に5%で始めればよいのではないか。
  • 代替案がなければ5%でよい。インセンティブをどう引き出すかが重要。
  • 事後的に一定の比率を修正する場合、3%から5%にする場合と5%から3%にする場合の事業者の納得感が異なる。その点も考慮すべきではないか。
  • 企業努力で得た利益を強制的に還元させる必要はないのではないか。5%で決めるということであれば、それでよい。
    • →今決めるべきかという意見もあったが、一定の比率については、「マイナス5%」とし、事業者が算定する乖離率については他律的要因の影響を除いて算定することとする。事務局においては、本会合の議論を踏まえ、省令等所要の改正を行っていただきたい。(稲垣座長)

⑥今後の託送料金制度の在り方について

  • 制度設計WGの議論では、個別に需要と供給をひも付けることは難しいので、電圧階級ごとに割引を検討するという案があったが、この案は同一バンク内に潮流が収まっていることが前提となっており、やはり公平ではない。誰かの託送料金を割り引くことは、誰かの負担を増やすという点をきちんと認識するべき。自由化の恩恵があまり受けられない地方の需要家に負担が偏る可能性がある。小売と違って、託送は公的なもの。託送料金の割引をルール化するのであれば、定量的な論拠が必要。同一バンク内に収まる需要と供給がどの程度あるのか、インバランスやアンシラリーサービスの負担がいくらか等を定量的に説明しなければならない。風力発電についても、割引制度の目的は、分散型電源の導入自体ではなく3E+Sであることを認識した上で議論すべき。
  • 今の託送制度は、特定の事業者にとって有利な側面があること、必ずしも定量的な分析に基づいて作られているわけではないことを踏まえれば、制度を変更するために定量的なデータが必要ということにはならないのではないか。
  • 風力発電は環境には優しいが、変動しやすいため調整コストが増加するという課題がある。FIT後も考慮して、長いスパンで考えた時に、諸課題にどのように対応するつもりか。
  • 第一に、国民の付託に応えるために、安価な電気をつくる必要がある。変動電源というイメージがあるが、言われるほどには変動せず、調整コストも高くはない。もちろん、一つ一つの風力発電機の発電量は変動するが、トータルでみれば高い確度で総発電量を予測できるシステムが海外では構築されており、日本では現時点ではそこまでは至っていないが、将来は不可能ではない。今の日本では風力発電は高いという認識だが、国際市場では、火力相当のコストになっており、場合によっては火力よりも安い。そういう観点から、風力発電をさらに推進していきたい。
  • 託送料金を全国一律にすべきという話もあったが、各電気事業者はエリア内で品質を確保しているのが現状。FITが終わった後の長期ビジョンは何か。どのように風力発電を位置づけ、日本のエネルギーミックスに貢献していく考えなのか。
  • 風力発電は、FIT価格で地域の電力会社に買ってもらっているので、託送料金が基本的に発生しない。地域をまたぐ場合は託送料金が発生するが、現状の制度下では風力発電事業者ではなくて小売電気事業者が負担するので、託送料金のインパクトはない。近接性の問題や託送料金の統一化については、将来を考えた場合、FIT制度がいつかはなくなり、風力発電ビジネスも競争環境の中で生きていくのが基本。そう考えると、様々な場所で風力発電を建てる場合に、地域毎に託送料金が異なることはなかなか理解できない。そうすると、託送料金が安い地域でしか風力発電が建てられない。個人的な考えではあるが、送配電事業者を一本化する考えもあると思う。
  • 託送料金を一本化すべきか地域毎に変えるべきか、という点は議論の余地は確かにある。しかし、ネットワーク的に立地が望ましい地域の託送料金は安くなって、送電負担がかかる地域は高くなることの方が自然だと考える。
    • →全体の目的、効果、手段等を具体的な事実に基づいて議論していくことが必要。今後も関係者からヒアリングを行って進めていきたい。(稲垣座長)

以上

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最終更新日:2016年4月1日
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